BLUE REFLECTION RAY/澪 第5話『何もみえないわたし』
総評
第5話は、あるアプリで有名な女子高生を都が救う回。都の問題提起がされたことだけでなく、リフレクターでなくともフラグメントを取り除けることが明らかになったという意味でも重要な回であろう。相変わらず画は薄味で、気になる部分も少なからずあるアニメだが、話自体は面白い。まさに「謎味ジュース」のような味わい、ぜひご覧あれ。
ストーリー
主軸のストーリーを時系列順に並べてみる。
①主人公たち4人が由紀姫について話す
②陽桜莉と瑠夏が由紀姫の手がかりを探す
③都の心配事について、都と百が話す
④由紀姫の想いが暴走する
⑤都と由紀子がチャットで話し、フラグメントが消える
⑥都と由紀子が電話で話す
また、サブのストーリーとして、
(ⅰ)詩が『由紀姫の魔法部屋』を使って由紀姫を暴走させる
(ⅱ)詩の過去が語られる
というものがある。
由紀姫(高岡由紀子)の救出がメインの回。情報も少しずつ明かされ、全体的なストーリーもスローペースながら進んでいる印象。
分析
構造上、都の内面が鍵となり由紀子に影響を与えていく回であるので、都について中心にストーリーの枠組みを述べていくとしよう。
都は裕福な家庭で生まれ、育ちも良く、周りからもよく羨ましがられる。しかし、彼女自身には誰にも打ち明けられない悩みがあり、ある出来事(詳細は第2話)が決定打となって家出を決意した。
都は、自分が家族にすら見向きもされていないのではないかという悩みを抱えている。そのため、クラスメイトに家庭の裕福さや育ちの良さを褒められても少しも嬉しくない。そこで、都は陽桜莉や瑠夏と出会い、自分の居場所を見つけ、悩みを打ち明けられる親友も出来たのだが……。
都は家族の繋がりというものを信じており、家族をとても大切なものと思っていた。あの事件があった後でも、それを忘れることは出来ない。そのため、家族と離れている現状、都には寂寥感が増すばかりだ。そして、家族から離れ気の知れた仲間のもとで暮らすことは、現実逃避している状態に他ならない。このままでは、都の根本的な問題を解決するには至らないだろう。
『由紀姫の魔法部屋』を営む由紀子もまた、現実逃避の手段としてネット活動をしている。そして由紀子は、皆が慕うのは由紀子ではなく自分を偽った姿である由紀姫だと、誰も本当の自分を見てくれないと、孤独と寂しさを感じている。
重要なのは、由紀子は他人と同じように生きたい、すなわち、学校に行って友達と話して……といった生活を望んでいるということだ。これは、他人が普通に過ごしているような日常を過ごしたいという意味で、家族の愛情を感じて生きていきたい(今までの家族関係に戻りたい)という都の願いと似ている。
このように、本質的に引きこもりである都との共通点も多く、二人で話していくうちに互いが互いの救いになる、というストーリーである。
ここで、詩の仁菜に対する依存と都と由紀子の関係性が、同じ電話を通して表現されるという対比も面白い。
都は当然として、今後も由紀子というキャラクターは出てくるだろう。二人の行く末をじっくりと見守っていきたい。
気になった要素
1. 必然
[5:55]百がまとめた地図
一定地区に集中して病んだ子が多いらしい。
「精神を病む=その人のフラグメントが現れる」ことだと解釈すれば、敵リフレクターの活動範囲が狭いことの裏付けとなる。由紀子の家が近くにあることも、これで説明できるだろう。
『由紀姫の魔法部屋』は全国的に有名っぽいが、実際に魔法をかけられた(フラグメントを奪われた)人物は主人公たちが住む地区に集中するのではなかろうか。実際に由紀姫に会った人を探すという発想が出てくるのも自然な流れだ。
とにかく、味方と敵と被害者は近い場所にいるのだから、リフレクター同士が衝突することの必然性はあるし、上手いこと話の整合性を生み出せているということだ。あまり、多くは語るまい。
2. 記憶
[21:39]「都の言葉だけは覚えている」と言う由紀子
フラグメントが抜き取られ暴走している状態の記憶はなくなるようだが、その人の暴走状態を止めるトリガーとなった出来事は覚えている、ということなのだろうか。
だが今回の場合、都と由紀子のやり取りはチャットに記録されているはずだ。そのため、チャットをした記憶が消えてしまっても、由紀子はその証拠を見ることによって思い出せた可能性がある。
全ての記憶が失われるのか、部分的に覚えているのか、思い出すことは可能なのか。この辺りの明確な答えが欲しい。
3. 腑に落ちない点
[20:49]本名を名乗る由紀子
(前提として高岡由紀子が偽名であるという仮説はパス)
単に脚本上の問題なのだが、ここで由紀子が名乗るのは腑に落ちない。
最大の問題は、個人情報漏洩の可能性について言及するセリフがありながら、由紀子のネットリテラシー皆無の行為を描いていることだ。個人情報漏洩を負の側面として描いている以上、由紀子という人間は作品が示す道理に反してしまい、由紀子に対する印象を無駄に下げかねない。また、チャットで少し話しただけの人間に、すぐに本名を教えるほどに心を開くだろうか。都と由紀子のチャットにもう少し時間をかけ、電話で実際に声を聞いてから本名を教えるか、あるいは都が由紀子に注意してフォローする場面があればなお良かっただろう。
以上で、BLUE REFLECTION RAY/澪 第5話『何もみえないわたし』のストーリー分析を終える。