はじめに
原作ゲームは未プレイ。
総評
今回は、美弦と百が出会う回。ストーリー自体はそれほど進んでおらず、どちらかと言えば説明回の側面が強い。相変わらず話運びは非常に丁寧で安心感がある。また、要所要所での演出は冴えており、見応えのある一話と言えるだろう。
ストーリー
今回のメインストーリーは以下の通り。
①美弦と百が出会う
②美弦と仁菜が戦う
今回のサブストーリーは以下の通り。
(ⅰ)詩が仁菜にちょっかいをかける
(ⅱ)陽桜莉と瑠夏が佳奈のお見舞いに行く
(ⅲ)陽桜莉たちが百の動向を気にする
特筆すべき部分はない。軽くストーリーを触れた後、演出部分を掘り下げたり、明かされた設定とそうでない設定とを整理したりする項を設けよう。
分析
1. ストーリーの概要
今回のストーリーとその過去の背景がどのようになっているかを整理しよう。提示されたのはループ構造であり、世界は時間が巻き戻り繰り返されていることが明かされた。上から時系列順に示す。
(Ⅰ)元の世界
- 美弦と百は、リフレクターのバディの関係であった
- 謎の異形「原種」から世界を守るために戦っていたが敗北した
- 誰かが原種を倒し、何かが起こった
(Ⅱ)今の世界
- 時間が巻き戻り、百の記憶は失われたが、美弦は覚えているようだ
- 原種は出現しておらず、「コモン」は閉ざされて入れない
- 大量のリフレクターが生まれている
- 元の世界の基準では、(今の世界の第9話の日付から)三日後に原種に敗北した
- 美弦と百が共鳴することで、百は記憶を取り戻した
- その三日後に備えて、美弦はフラグメントを回収している
これを見ても分かる通り、かなり多くの説明がなされたものの依然として分からない要素がいくつかある。それについては後々見ていくことにしよう。
2. 美弦
ストーリー的にも人物像的にも謎の多かった美弦であったが、今回では少しずつその内情が明かされてきた。
[6:28]「誰もが百のようには強くない」と主張する美弦
直後にサブストーリー(ⅱ)が挿入される形。その後に美弦と百のシーンに戻る。
「思いを捨てたいと祈る子たちを見たでしょ」という百の発言であるが、その代表例として挙げられるのが佳奈である。また、そのような子たちを百のようには強くない存在として見ている。
さらに美弦は、「強いからといって傷つかないわけじゃない。強くても傷つくし苦しさが軽くなることは無い」とも言っている。強い者でさえそうなのだから、況や強くない存在はなおさらだ、という意味が含まれている。
「フラグメントを抜くのはそいつら(強くない存在)のためなのか」という百の問いに対する美弦の答えは、一応は是である。もちろん、フラグメントを抜く真の目的は別にあるわけで、その行為がせめてもの救いになればということで佳奈たちをターゲットにしたのだろう。
その一方で、美弦は百の強かさを認めているともとれる。かつてバディであった百への信頼感や百の頼もしさは、美弦の中に残っていることが読み取れる。
だが、未解明な要素もある。
- 美弦の過ちとは?
[10:32]「間違っていた、私。どうすればいいのか分からない」と嘆く美弦
原種との対決中、ここで美弦は戦意喪失する。
- 何故美弦は陽桜莉に何も言わなかった?
百は美弦に同様の問いをするが、美弦は何も答えていない。
3. 演出
[1:24]揺れる蠟燭の炎
詩に「山田の思いは不安定だ」問い詰められ、「適当なこといってんじゃねえ」と吠える仁菜。そんな仁菜の内面を表現している。
[5:11]赤いバラに手を差し伸べる美弦
[8:05]「強くても傷つかないわけじゃない」と言いながら散っていく赤いバラ
[8:16]傷ついている美弦の手のひら
「人の想いの結晶」というセリフと呼応するように映し出された赤いバラ。それを摘み取る様子はまさにフラグメントを抜く行為そのものである。花びらが散っていく場面は、フラグメントを抜いて想いが消えることを暗示している。
[8:41]歩み寄る百と消える剣
百がかつて美弦のバディであったことを確信。美弦の思いを受け止め、理解していることが分かる。
[12:07]水面に映し出された三日月
夜空に見える三日月が度々描かれる中で挿入されたカット。美弦が真相の告白をする際の、「別世界」を表す描写。
補足
1. 「リフレクター」の定義
[5:05]の美弦のセリフをそのまま引用する。
リフレクター:人の思いの結晶そして世界の力の源のなるフラグメントに触れ、その力を集めて扱えるものたちのこと
ユズとライムに選ばれ、美弦たちはリフレクターになったという。フラグメントを抜くことで力をもらい、世界を原種から守るために「コモン」の中で戦ったという。
2. 指輪
[9:37]黄色の指輪
指輪の色は陽桜莉サイドが青、美弦サイドが赤として描写されてきたが、元の世界の描写では黄色をしている。
本来のリフレクターは、赤でも青でもなく黄色、ということなのだろうか。
だが、第1話の[1:06]の元の世界の美弦の指輪は青に見えるし、今回の[10:18]の美弦の指輪は赤に見える。ならば、黄色は百だけなのか。真相はよく分からない。
[9:29]宝石箱に青い指輪を入れる美弦
元の世界の描写。この宝石箱は陽桜莉のものである。
しかし、単に省略されているだけかもしれないが、今の世界で美弦が宝石箱に指輪を入れた描写はない。だとすれば、宝石箱の中身だけ保存されて世界が巻き戻されたのではないかとも考えたが、根拠はかなり薄い。
あと、「指輪に反応しなければリフレクターにはなれない」という条件は第2話で明かされている。指輪を託すということは、その人にリフレクターを託すということになるわけで、美弦は原種に負けた後、陽桜莉にリフレクターになって欲しいという思いがあったのかもしれない。
2. 原種に敗北
美弦「私たちは負けてしまったけど、おそらく、誰かが原種を倒し、何かが起きた。ここでは原種が出現せず、コモンは閉ざされて入れない。でも、大量のリフレクターが生まれている。前とは理が変わってしまった。」
原種を倒した人は誰か、その後何が起きたのかは詳細には語られていない。
3. 記憶
なぜ百の記憶だけが失われて美弦は記憶を持っているのか。これに関しては、今回で少し解明された。
美弦は「ある人が言うには、世界がリセットされたようなもの」と言っている。この「ある人」が誰なのかは不明だが、美弦は誰かに真実を教えてもらって今に至るということだ。
であれば、原種に敗北したことによって美弦と百は記憶を失い、美弦だけは誰かに教えてもらうことによって真実を知った、というように解釈出来る。
さらに、今回で百は美弦と共鳴することによって前世の記憶を回復することに成功している。同様の手段かどうかは分からないが、誰かが超常的な現象を起こして美弦も記憶を取り戻したと考えれば、美弦の記憶だけ失われていない状況にも説明がつく。
それが「ある人」につながっていくと考えられるのだが、位置的に怪しいのは、やはり「AASA」だろう。美弦が「AASA」と関わりを持っていると考えれば、もともとバディであった百と「AASA」が関わっていることにも不自然な感じはしない。
そもそも、世界が巻き戻ったとして誰がどうやって前世の記憶を持ち得るかが、まず分からない。と、疑問に思って考えた仮説が、上述した「宝石箱の中身の保存」である。世界が巻き戻ることの影響を受けず保存されるものがあるとすれば、記憶を持ち続けている人がいるのも不思議ではないと考える。(例えば、フラグメントのような思いの結晶を抜き取って保存して、世界が巻き戻った時にそれを持ち主に返すとか)
ちなみに百によれば、「AASA」とは指輪について研究している機関らしい(第2話)。しかし、その正体は不明。
4. 美弦の目的
美弦サイドがフラグメントを集める目的は何か。三日後に備えてということなのだが、詳しくは語られていない。
原種の発生や陽桜莉関連で何かあると考えるのが妥当だろう。
残された伏線や謎は以下の通り。
①「原種」とは何か?
②「原種」の発生条件は?
③「AASA」の正体と目的は?
④第1話で電車の音に搔き消された百のセリフ、何と言っていた?
⑤美弦の目的は?
⑥紫乃の正体と目的は?
⑦フラグメントを抜かれて失った記憶は戻るのか?
⑧仁菜のスーツケースの中身は何?
⑨紫乃の能力は何?
⑩美弦とAASAの繋がりはあるのか?
⑪「コモン」の定義と発生条件は?
⑫美弦はどうやって前世の記憶を知りえたのか?
⑬指輪の色の意味は?
⑭原種を倒したのは誰?
⑮世界が巻き戻ったタイミングはいつ?
⑯美弦の過ちとは?
⑰何故美弦は陽桜莉に何も言わなかった?
⑱美弦の「誰かが原種を倒し何かが起こった」の何かとは?(世界のリセット?)
⑲世界はどのようにしてリセットされた?
⑳ユズとライムの正体と目的は?
以上で、BLUE REFLECTION RAY/澪 第9話『彼女の言ったこと』のストーリー分析を終える。