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アニメの感想&批評

【ストーリー分析】BLUE REFLECTION RAY/澪 第10話『墓を掘る美しい娘たち』(感想・考察)

BLUE REFLECTION RAY/澪 第10話『墓を掘る美しい娘たち』

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はじめに

原作ゲームは未プレイ。

基本情報

総評

第10話は、登場人物の様々な思いが交錯する回。多くのメインキャラクターの内面や思惑が語られ、クライマックスに向けて着々と準備を進めているストーリーは、まさに群像といった趣を醸し出している。内容的にはかなり詰め込まれており、それぞれのストーリーの関連度もそれほど高いわけではない。だが、次回に繋がる引きも用意されており、接続回としてはスタンダードと言えるだろう。

ストーリー

実質的にメインストーリーは全てであり、またそれらの多くが独立しているため、項目別で分けることが難しい。ここは無難に、陽桜莉サイドと美弦サイドで分けよう。

陽桜莉サイドのストーリーを時系列順に並べてみる。
①百が皆に真相を話す
②陽桜莉と瑠夏が話す
③三人が都の説明を聞き、都がどこかへ行ってしまう
④百と瑠夏が都を探し、瑠夏が見つける
⑤陽桜莉が姉の美弦と戦うことを決意する
⑥瑠夏と紫乃が出会う

美弦サイドのストーリーを時系列順に並べてみる。
(ⅰ)紫乃が美弦を心配する
(ⅱ)仁菜が紫乃に話を持ち掛ける
(ⅲ)美弦と紫乃の計画が明かされる

新たに判明した情報については、ストーリー③で語られたものがほとんどだろう。

分析

ここでは、時系列順にストーリーを語るのではなく、キャラクター別に見ていこう。


1. 陽桜莉

[4:28]屋上で話す陽桜莉と瑠夏
陽桜莉「昨日の話ショックじゃなかった?」
瑠夏「また、悪い癖。自分のことより人のこと」
今まではっきりと描かれてきた陽桜莉の性格である。ここで、陽桜莉は姉を気にかけていることを打ち明ける。

[13:29]陽桜莉の回想(幻覚?)
陽桜莉が宝石箱を開けて姉との思い出を噛みしめるシーン、とその直後には都は登場しリープレンジ色の昆虫が横切るカット。ここからしばらく、陽桜莉は幻覚(姉の内面)を見ていたということだろう。

[14:10]自分の鎖で自分を縛る美弦
「自分の思いを信じて」と語りかける昆虫。その後、美弦が宝石箱を眺めるシーンが挿入され、陽桜莉は目を覚ます。

[14:50]はっとして「お姉ちゃん」と声を上げる陽桜莉
このとき、陽桜莉はあることに気づいた。それは、姉自身は陽桜莉を想って苦しんでおり、陽桜莉に指輪を託したということだ。これは、姉が陽桜莉にリフレクターになって欲しかったということを意味する。

[16:10]陽桜莉の決意を聞く三人
「私たちのやっていることは正しかった。だから、私はお姉ちゃんと戦う。それがお姉ちゃんの思いを確かめる方法だから。お姉ちゃんの心に寄り添っていたいから」
陽桜莉が自分の気持ちを表明した場面である。

構造上今回の陽桜莉は、陽桜莉サイド四人の中心に立ち、物語を突き動かす役割を持っている。その流れは、
陽桜莉が瑠夏(他者)によって姉の気持ちを理解しようとする
→姉の気持ちに気づく
→姉の心に寄り添うために三人に気持ちを表明する
というものだ。


2. 瑠夏

[4:28]屋上で話す陽桜莉と瑠夏
「また、悪い癖。自分のことより人のこと」
「言えたじゃない、自分の思いを隠さずに。私も手伝う」
陽桜莉の気持ちに寄り添う瑠夏の構図。陽桜莉の行動原理を補助する役割を持っている。

[11:57]都を見つけた瑠夏
「昨日のことごめん。あんたを否定するようなこと」
「あなたがいてくれるだけで心強い、私たちみんな」
今度は都に寄り添う形。今回の瑠夏は、他のキャラクターの補助に徹している。

[16:27]陽桜莉を後押しする瑠夏
「その人の気持ちは、その人だけのもの。でも、一緒に考えることはできる。寄り添うことはできる」
他のキャラクターの補助に徹している様子を描いてきたからこそ、瑠夏のこの発言には説得力が生まれている。

[21:36]母親とメッセージのやり取りをする瑠夏
「できたよ。親友が三人」「良かった」
陽桜莉、百、都が瑠夏の親友に相応する存在となるためのストーリーは、今までしっかりと築かれてきた。また、母親も瑠夏の内気な性格を気にかけていたのだろう、安心感を覚えている様子が伺える。

[22:22]紫乃に声をかける瑠夏
第1話では悩んでいる女子に声をかけられなかった瑠夏。これは、瑠夏の「変化」を思わせる描写でありながら、次回への引きとしても機能している。


3. 都

[7:49]都の思い
「彼女はもう、陽桜莉の知るお姉さんじゃないと思う」
非リフレクターの視点から考えれば、当然の結論だ。そもそも美弦を信じるに値する根拠を持っているのは現時点で百のみであり、その百の証言を受けたとて都にそれを信じる義理はない。「パラレルワールド」を根拠に、美弦の人格が陽桜莉の知る姉とは異なることを主張する。

[5:49]調査に熱心な都
[11:23]踏切の前に行く都

「嬉しかった。役に立ちたかった。新しい居場所が出来たと思ってたんだけどな」というセリフからも、都が調査熱心であることの裏付けになる。ここで、「嬉しかった」というのは、第3話で陽桜莉と瑠夏が都のフラグメントを守り、本当の自分を「見つけて」くれたことに対してである。

[12:50]瑠夏に感謝の言葉を述べる都
「ありがとう。二度も私を見つけてくれて」
一度目は、上述した第3話の出来事である。

[20:50]陽桜莉と瑠夏にプレゼントをする都
お守りと称して、手作りのブレスレットを渡す都。百にも渡すつもりでいたが、ビーズが足りず渡せなかった。

ここで都が陽桜莉や瑠夏に何かを「プレゼント」するのは、ストーリー展開的に必然である。順を追って述べると、まず、自分を「見つけて」くれた陽桜莉と瑠夏に対して何かをしてあげたいと熱心に調査を行い、「美弦は陽桜莉の知る姉ではない」と結論を出した。だが、その結論は百を中心に三人に棄却される。その後、瑠夏との絡みもあり陽桜莉の思いを尊重するに至るが、その時点で都は実質「何も役に立てていない」のである(結果的には、都の主張と同じように陽桜莉は戦うことを決意するが)。そのため、都が「二人の役に立つ」ストーリーは、第10話の都軸のストーリーを綺麗に完結させるために必要なピースなのだ。ブレスレットのプレゼントは、陽桜莉や瑠夏、百の士気を高めるのに一役買っているため、構造上極めて重要なストーリーと言えよう。


4. 美弦と紫乃

まず、美弦と紫乃の仁菜を利用した計画の概要を述べる。

  • 仁菜の近くに詩を配置し、仁菜の憤懣を募らせる
  • それを美弦が包み込むことによって、仁菜の美弦への想いを強める
  • 仁菜は弱体化し、強くなりたいと願って指輪を手に入れる
  • 指輪を使えないという葛藤が想いを暴走させ、最強のフラグメントと化す

計画自体は上手くいったが、仁菜以上に強い絶望を知るリフレクターが現れた。それが陽桜莉だ。そのため、仁菜のフラグメントでは「コモンの扉」は開かないらしい。

「そんなことしたら私たちが望む世界に……」
「『あなたが望む世界』でしょ?」
仁菜の代わりに陽桜莉を利用するとなると、彼女の想いが消えてしまう。その真実から美弦は狼狽する。

紫乃の「あなたが望む世界」という指摘は至極全うであり、そんなものは美弦の私利私欲でしかない。

そして、「また、殺すの?まだ殺し足りないの?」と問われる美弦。そこから紫乃は陽桜莉を演じ、美弦に幻覚を見せる。美弦は陽桜莉に化けた紫乃を抱きしめ「あなたのため」と連呼する。

一度目に陽桜莉を「殺した」のは、第7話の陽桜莉と美弦の再開と読み取って良いだろう。さて、この場面で大事なのは紫乃の狡猾な実験である。紫乃は陽桜莉を特別扱いすることを許さず、「美弦の望む世界」を否定した。それゆえ、ここで仮に美弦が陽桜莉を切ることが出来なければ、美弦を計画に使うことはできない。紫乃は陽桜莉に化けることで、それを確かめたのだ。結果は上記の通り。次回以降、美弦は紫乃に簡単に身内切りされる展開が想像できる。


5. 仁菜

アバンでは、「思いを強くすることでかえって心が不安定になっている」と詩に指摘されいる。また、その状況を詩は「皮肉」ととらえており、現状仁菜を心配しているのは美弦だけのようだ。だが、後に語る計画によって仁菜が利用されていることが明らかになる。心が不安定になるのも、美弦と紫乃の計画通りだったということだ。

[9:00]「強くしろ」と紫乃に話を持ち掛ける仁菜
もう二度と美弦の前で醜態を晒すまいと、強くなるよう紫乃に懇願する。

そこで仁菜に渡されるのが、新しい黒色の指輪だ。これを付ければ、自分の力の源となる想いが増し力も強くなるが、その代償として強まった想いが消滅するとのことだ。

ただただ利用されるだけの山田仁菜……。彼女の行く末を見守りたい。

補足

1. 聖イネス学園

聖イネス学園の生徒に在籍しているはずの詩、仁菜、美弦は偽名で通っているらしい。百のマップと集団暴走のデータを重ね合わせることで、聖イネス学園の生徒のフラグメントが抜き取られていることが示された。


2. 斎木有理

[5:58]斎木有理「斎木です」
初めて苗字(スタッフロールではフルネーム)が明かされたキャラクター。一応、第3話でリープレンジ明けの場面に一瞬登場している。彼女の目的や人物相関は謎である。


3. コモン

コモンの発生条件に関して。紫乃の発言によれば、リフレクターの強大なフラグメントが鍵となるらしい。ただ、果たして「コモン」が何なのかは未だ明かされていない。



残された伏線や謎は以下の通り。

①「原種」とは何か?
②「原種」の発生条件は?
③「AASA」の正体と目的は?
④第1話で電車の音に搔き消された百のセリフ、何と言っていた?
⑤美弦の目的は?
紫乃の正体と目的は?
⑦フラグメントを抜かれて失った記憶は戻るのか?
⑧仁菜のスーツケースの中身は何?
紫乃の能力は何?
⑩美弦とAASAの繋がりはあるのか?
⑪「コモン」の定義は?
⑫美弦はどうやって前世の記憶を知りえたのか?
⑬指輪の色の意味は?
⑭原種を倒したのは誰?
⑮世界が巻き戻ったタイミングはいつ?
⑯美弦の過ちとは?
⑰何故美弦は陽桜莉に何も言わなかった?
⑱美弦の「誰かが原種を倒し何かが起こった」の何かとは?(世界のリセット?)
⑲世界はどのようにしてリセットされた?
⑳ユズとライムの正体と目的は?
㉑斎木有理の正体と目的は?



これで、BLUE REFLECTION RAY/澪 第10話『墓を掘る美しい娘たち』のストーリー分析を終える。