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アニメの感想&批評

【ストーリー分析】白い砂のアクアトープ 第2話『濡れるのも仕事のうち』(感想・考察)

白い砂のアクアトープ 第2話『濡れるのも仕事のうち』

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はじめに

頑張って追いつきます。

基本情報

評価

A スタンダード

総評

第2話は、第1話に引き続き風花視点が中心となる。ポイントは、夢を追いかけるくるると想いを支える風花という構図だ。前回のファンタジー路線とは打って変わって、現実を硬く描いていく。「風花ががまがま水族館で働く理由を見つける」エピソードとして、ストーリーが丁寧に作られており、好感が持てる。

ストーリー

今回のメインストーリーは以下の通り。
①風花が住み込みでくくると働くことになる
②風花がペンギンの餌やりで失敗し、くくるに叱られる
③風花が夏凛(観光協会の公務員)からくくるの話を聞く
④風花とくくるが話す

サブストーリーは、
(ⅰ)くくるが夏休みの目標を立てる
(ⅱ)風花とくくるが営業の男を追い払う

ファンタジックな前回とは一変、仕事のシビアさなどの現実の重さを強調しつつ、二人の間合いの変化を描く第2話である。

分析

まず、第2話のストーリーの大枠を作るのは、風花の水族館での仕事である。当然、背後には心理的なストーリーが展開されており、仕事のいきさつが風化の決意に繋がっていく。

その決意とは「夢を追いかけるくくるを応援すること」だ。そこに至るための要素(風花の過去、風花の失敗など)が、テーマを補強する形になっており、ストーリーの強度は高い。

冒頭、風花が水族館のスタッフとして働きたいとくくるに懇願する。そもそも、なぜ水族館で働きたいと思ったのか。

前回の内容に戻るが、くくるが「人手不足」を口にした後、風花が「ここにおいてください」と言っている。確かに、困っている他者の助けになりたいというのは自然な心理であるし、風花は夢を失いさまよっていたところに新たに目的を見出したため、前回の展開に無理はない。しかし、それが「がまがま水族館での仕事」でなければならない理由は描かれていないのが現状である。その理由を見つけるのが第2話のメインストーリーである。

具体的に風花の過去を追っていこう。風花がセンターと決まった際、とある理由から後輩がセンターをやりたいと言い出し、風花がチャンスを譲った。しかし、それによってマネージャーやスタッフにはやる気がないと判断され、徐々に出番を失ってしまった。高校卒業の時期も相まって、アイドル活動を辞めるに至ったのだ。

風花のアイドル絡みの過去についてこれ以上掘り下げる必要もないだろうから、風花の過去に関する情報は出尽くしたといっても良いだろう。

さて、現在。流れに流されて行き着いた住み込み先で、「どこでも良かった」と風花が思っていることをくくるに指摘される。
[6:40]浮かない様子のくくる

風花の初仕事はペンギンの餌やりである。くくるに指示されて行った餌やりショーは、完全に失敗に終わる。
[10:18]子供たちに笑われる風花
[11:15]手に絆創膏が三つ

この時風花が、水族館員としてだけでなく、餌やりショーを演じる役者としても失敗しているというのは、一つポイントだろう。アイドル活動の過去に、しかと向き合えていない風花の一面が如実に表れている描写である。

水族館に「真心を込める」とのくくる。風花とは対照的にくくるの仕事想いな点が随所に表れている。風花はくくるの傍で、その熱心な姿を間近で見ることになる。
[7:59]風花のマニキュアを注意するくくる
[10:25]風花を叱るくくる
[12:00]看板を立てるくくると風花

そこで挿入されるストーリーが風花と夏凛(観光協会の公務員)の会話である。夏凛は、設備の老朽化が主要因となって水族館が今月末に閉館になること、くくるは水族館を続けることを諦めていないこと、くくるは切羽詰まっているということなど、状況を話した。風花は、夢を守るために真剣なくくると自分の姿を照合し、辛い思いはしてほしくない、力になりたいと言う。
[14:07]胸に手を当てる風花

くくるにとってがまがま水族館は大切な場所であり、それを守ることが夢である。風花はアイドルの夢をあきらめたことをくくるに打ち明ける。夢を追いかける少女とその夢を応援する少女。風花の過去のエピソードでは、他人を必要以上に気にかけてしまう性格が結果的に彼女の失敗に繋がったが、そんな風花の立場が明瞭になったのが今回のラストシーンである。

夢に対するくくるの真摯さを間近で眺めていた風花がその助けになるというストーリーには、十分な強度がある。

補足

1. 8月31日

8月31日は閉館のタイムリミットであった。主な要因は、施設の老朽化とその維持費不足。それを回避すべく、くくると風花は奮闘する。


2. 高校生

風花は高校生であることが明かされた。高校を辞めないとして、常識的に考えれば、9月には学校が始まるだろうから沖縄を離れないといけない。ストーリー的に考えれば、8月31日の閉館フラグを折ることが一つの目的地であるから、風花の問題はストーリーに直接関わってくることがあるかもしれないし無いかもしれない。


3. 風花の母

風花が母と電話をするシーンがあったが、沖縄に行っていることすらも伝えていない。水族館に関してだけでなく、家族絡みのストーリーにも注目したい。


4. 紅芋の変色

[3:48]サーターアンダギーが緑色に
中の紅芋が緑色に。なぜか。紫芋や紅芋に含まれるアントシアニンという酸性の物質が、生地のベーキングパウダーの塩基(アルカリ)性と反応するためである。

アントシアニンは青紫色の天然色素であり、塩基性に傾くと青紫→緑に、酸性に傾くと青紫→ピンクになるという特徴がある。つまり、紅芋にレモン汁を垂らすとピンクになる。


残された伏線や謎は以下の通り
母子手帳の意味は?
②ファンタジー現象の謎

これで、白い砂のアクアトープ 第2話『濡れるのも仕事のうち』のストーリー分析を終える。