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アニメの感想&批評

【ストーリー分析】BLUE REFLECTION RAY/澪 第11話『わたしに有罪宣告を』(感想・考察)

BLUE REFLECTION RAY/澪 第11話『わたしに有罪宣告を』

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はじめに

原作ゲームは未プレイ。

基本情報

  • 監督:吉田りさこ
  • 脚本:和場明子
  • 絵コンテ:杉島邦久
  • 演出:石田美由紀
  • 総作画監督:出野喜則、村上雄、坂本哲也
  • アニメーション制作:J.C.STAFF

評価

B スタンダード

総評

第11話は、攫われた瑠夏を起点に登場人物の交錯する思いがぶつかり合う回。中盤にかけてはコモンの定義や美弦サイドの目的などが説明的に明かされる。そこから終盤にかけては著しく盤面が変化するが、その構造自体は追いやすい。ただ、紫乃は美弦が暴走するのを狙っていたようだが、この展開は必然性、論理性ともにやや欠ける。その他数人の思惑も不明瞭という状態であり、モヤモヤが溜まる。

ストーリー

メインストーリーは以下の通り。
①陽桜莉たちが瑠夏を助けに行く
②百のフラグメントが破壊される
③美弦が暴走する

サブストーリーは
(ⅰ)都と斎木有理が出会う
などがある。

都・有理ペアとその他全員という二視点で語られる。メイン、サブ共に新たな情報が明かされ、説明回としても重要な一話である。

分析

瑠夏が攫われた状態からスタート。詩は陽桜莉のフラグメントが目的だと早々に明かしてしまう。それに対して仁菜が怒り、直後の詩の弁明では、「だって、お姉さんだけが苦しむのは不公平だ」と述べている。

仁菜は、美弦と紫乃の計画で利用された結果、心が不安定な状態である。しかし、仁菜以上に深い絶望を知るものが現れ、美弦の計画の対象となる。それが陽桜莉だ。一応、仁菜が犠牲になるのも美弦の計画を遂行するための一つの手段(らしい)のだが、美弦サイドは陽桜莉に狙いを定めている。

要は美弦のために山田が苦しむか陽桜莉が苦しむかの二択である。仁菜がキレたのは、陽桜莉への共感から来るのか、美弦への信仰からくる自己犠牲を望んでいたのか、はたまた他の理由なのか判断できない。そもそも、仁菜は絶望を取り除くことを善とする立場にいるため、陽桜莉のフラグメントを抜くのに躊躇う必要はないという考えも理解できるし、美弦を大切な存在と認識しているという意味で同じ立場にいる陽桜莉を庇っているともとれるが……。
[00:51]詩に怒る仁菜

一方で詩は、美弦が苦しまないように陽桜莉を利用しようとしている。だが、そもそも美弦だけが苦しむ選択肢はないはずなので、上の発言が弁明になっているかは怪しい。

さて、瑠夏は陽桜莉を呼び出すための囮である。陽桜莉と百は美弦たちと接触することになる。陽桜莉は美弦の心の苦しみを直感し、その理由を問う。(視聴者視点では)前の世界の美弦には何かしらの「過ち」があって、それを繰り返さないようにコモンの扉を開かなければならないが、そのためには陽桜莉のフラグメントが必要だという情報が明かされている。その葛藤が美弦の心の苦しみとなっていることは第10話で描かれた通りだ。

その後、苦しみの理由については美弦サイドと瑠夏から陽桜莉に対して説明がなされた。

やや時系列が前後するが、瑠夏が捕まっている状態を解放するために、要望通り陽桜莉は自分の指輪を外して紫乃に渡そうとする。

「あなたに、ずっと大切にしてきた想いがあるでしょ。その想いを指輪は力に変えてくれる。あなたが止めるのよ陽桜莉」
「私はお姉ちゃんが好きなように、瑠夏ちゃんも大好きだから」

当然、瑠夏は反対するが、陽桜莉は瑠夏を助けるために指輪を渡す。

しかし実際は、美弦の要望に従ったわけではなく、リフレクターとなって美弦と真正面から敵対する道を選ぶ。その展開は、これまでの回で積み重ねてきたものを考えれば必然で妥当である。

陽桜莉の力を後押ししたのは、紫乃の発言から察するにコモンの姉妹のユズとライムである。なぜ、ユズとライムは陽桜莉に手を貸したのか、誰の味方なのか、などなど、彼女たちの目的が一切提示されておらず、謎が積もる一方である。

その後、美弦は陽桜莉のフラグメントを抜くことに強い抵抗を覚えるが、紫乃のアシストによって美弦の想いを増幅させ、陽桜莉のフラグメントを抜くように仕向ける。見どころは、陽桜莉と美弦の会話である。

陽桜莉に苦しい想いをさせたくない、陽桜莉のことを分かっていなかったのは私だと自分を責めている美弦。自分の想いでいっぱいでお姉ちゃんの想いに気づかなかったと、こちらも自責の陽桜莉。

美弦は前の世界の「過ち」の回避を行動原理としているのに対し、陽桜莉は前の世界の美弦が具体的に何を失敗したのか知らない。その視点の違いがすれ違いを生んでしまうのだが、それでも頑なに「過ち」の詳細を明かさないのは、それによって陽桜莉をさらに苦しめることになるからだろう。まあ、推測でしかないが。

そのまま、陽桜莉のフラグメントに手を伸ばすが、百が庇う形となる。百のフラグメントは破壊され、再起不能の状態に。一応、フラグメントが破壊される原理については詩が説明している。

前の世界では百を信頼していた美弦は、百のフラグメントを破壊してしまったことにより深く傷ついてしまう。

そして、三日後のタイムリミットの鐘が鳴る。紫乃は、美弦の心の苦しみに付け込んで、美弦を暴走させる。その意図は不明だ。紫乃の本当の目的は、仁菜を利用することでも陽桜莉を利用することでもなく、美弦を暴走させることだったのだろうか。

美弦の心の苦しみに付け込むためには、百のフラグメントが破壊されることで美弦に精神的ダメージを負わせることが必要だったのだろうか。しかし、百が陽桜莉を庇うといった展開を狙うのは流石に無理がある。偶然美弦が苦しんだところを狙ったとするのが、まあ妥当なのかもしれない。

百が大切に思っている存在かつ陽桜莉を庇うことの出来る存在として、百が選ばれているのだろうが、恣意的に作られた展開という印象も受ける。

補足

1. 斎木有理
AASAの関係者らしい。コモンに関係するあれこれを都に説明する。目的や人物の相関は不明。


2. コモン

集合的無意識により形成された世界。本来、人間感情を具現化した結晶はコモンにのみ存在する。しかし、原種との戦いで時空が歪んだ現在、世界の理は変化している。その歪みは急速な広がりを見せている。それを加速させている原因は、奪われた少女の結晶の力を使うことで時空の歪みを意図的に引き起こす存在にあるという。


3. 美弦たちの目的とその影響

陽桜莉を苦しめたくないというのはあくまで美弦の個人的な欲求であり、赤リフレクターの大義名分というものは別に存在する。

それは、コモンの扉を開き、少女たちの無意識の世界を管理することによって、少女たちの苦しみの根源を取り除くことである。愚かな人間がいる限り、少女たちの苦しみの連鎖は解かれない。フラグメントを戻すという行為は、一時的な効果しかない。だから、理不尽に苦しむ少女を二度と誕生させないためには、力を持つ自分たちがコモンを管理するしかない。そういった信念のもとで動いている。

赤リフレクターの中心的存在である美弦は、過去に何度も苦しむ少女を見てきた。そして、その誰もを救えなかったという。

斎木有理は、コモンが管理されるということは、想いの尊厳が失われている状態でもあるという。


残された伏線や謎は以下の通り。
謎に関しては、少し抜粋する。
①「原種」とは何か?
②「AASA」の正体と目的は?
③第1話で電車の音に搔き消された百のセリフ、何と言っていた?
④フラグメントを抜かれて失った記憶は戻るのか?
⑤仁菜のスーツケースの中身は何?
紫乃の能力は何?
⑦美弦たちとAASAの繋がりはあるのか?
⑧美弦はどうやって前世の記憶を知りえたのか?
⑨指輪の色の意味は?
⑩原種を倒したのは誰?
⑪世界が巻き戻ったタイミングはいつ?
⑫美弦の過ちとは?
⑬何故美弦は陽桜莉に何も言わなかった?
⑭ユズとライムの正体と目的は?
⑮斎木有理の正体と目的は?
紫乃の目的は?


これで、BLUE REFLECTION RAY/澪 第11話『わたしに有罪宣告を』のストーリー分析を終える。