波路を築く

アニメの感想&批評

歌詞から物語を推測してみる -序章-

無数に存在する曲の中で、経験値の無さから日本語しか上手く読み取れない悔しさを噛みしめながら、同時にその美しさや面白さの可能性を探る行為への果てしなさを実感する日々。ああ、これなら創作の海の中で一生楽しめるだろうなあと期待を抱いている。音楽という、大体のものは五分前後の時間的枠組みに抑えられたものの中で、「歌詞」というものは所詮一つの因子に過ぎないものだが、それだけでも我々の想像をはるか超える自由さを持っている。まあ、古くから日本では俳句という十七字にわびさびを精一杯詰め込んで楽しんでいる歴史があるし、それが何十文字、何百文字となれば表現方法はより千差万別なのだ。......  なはも
 

 という語りは置いておくとして、注目すべきは「良い歌詞とは何か」である

 まず処理しておきたいのが、「そもそも歌詞に良いも悪いもないだろ」という意見について。この言葉の意味するところは大まかに二種類あると思われるので、一個ずつ見ていこう。

 一つ目が、おそらく少数の人間にしか当てはまらないが、歌詞の良し悪しといった概念そのものが無く、比較検討することを無意識的に回避しているタイプである。つまり、人の魂がこもっているものはすべからく尊いもので、それを受けとめる側の視点というものがないまま、短絡的にそういった思考にたどり着く人間が用いるコンテクストだ。しかし、音楽(楽曲)は創作物である以上、不特定多数に聴かれることが前提であるし、他者からの評価は避けて通れない。もちろん、他者からの評価を受けたいというわけではない創作者もいるだろうが、作品を外部に発信するという勇気を持った行動には、大体は「触れて欲しい」という切実な願いあってのものではないかと考える。それゆえ、本ブログで執り行われる「評価」は創作に対する敬意を持った上での行為であるとご留意願いたい。

 二つ目が、聴き手それぞれの心にどれだけ響いたかが最も大事であって、結局は好みの問題でしかないという意味である。別に、本項ではその姿勢を否定しているわけではない。(というか、普段聴いている音楽って大半は俺が好きなタイプの曲だし。)しかし、理論や技法的な意味での良し悪しは判定できるのではないだろうかということである。つまり、好みと理論を切り離そうという試みである。当然、俺にはこれを客観的に伝えようとする努力・姿勢があってこそであり、適当なことを言いようもんならバッシングされて然るべきだ。それゆえ、読み手視点で間違っていると感じたならば、いつでも議論をふっかけてくださいというスタンスでやっていく。

 だが、そんな目くじらを立てるほどの内容を書くつもりはない。そもそも批判的な内容はほとんど書かないつもりである。なぜなら本項では、数多存在する曲の、自分が特に感動したものをピックアップするに過ぎないからだ。普通にリラックスして読んでくれれば問題ない。
 

重視するポイント

 前提として、「歌詞から物語を推測する」が本題であることをご理解いただきたい。すなわち、歌詞を記号的な音声として一元的に解釈するのではなく、そこに物語(ストーリー)が宿っていると考えられるものを対象にしている。
 以下の4つの観点を中心に見ていこう。

  • テーマの普遍性・一貫性
  • 音との親和性
  • 自然さ
  • イデア

 

テーマの普遍性・一貫性

 アニメ批評やストーリー解析で散々重視してきた(これからも重視することになるだろう)観点である。数多くの人間が共感できるか、あるいは特異な状況の中で組み込まれた物語の主人公の視点に立って共感することができるか、一曲の中で主張が曲がっていないか、総合的に見てリアリティがあるか......。
 具体的な評価基準は無いが、その場その場で適切な表現がなされているか、それが重要である。
 

音との親和性

 主に、曲調、展開、旋律と言葉の相性。心に響く曲というのは、母音だけで歌っても大体良いものだ。
 

自然さ

 ワードセンス、語彙、雰囲気の作り方、そういった要素を磨き上げていく中で、わざとらしくない、それっぽさが出ているかどうか。理詰めで考えるのはやや難しいが、間違いなく重要な要素である。
 

イデア

 何かしら目新しい要素があって、それが明確に曲の美点として現れているか。
 

物語

 もう一度言うが、最大の目標は「歌詞から物語を推測する」である。よって、曲のコンセプトによってはこの行為自体が無意味であり、対象となる曲はむしろ少ない。歌詞が作られていくなかで、まさしく物語の予感が感じられるような、そういうように確信をもって推定されるもののみをピックする。
 

余談