波路を築く

アニメの感想&批評

【ストーリー分析】BLUE REFLECTION RAY/澪 第12話『最深』(感想・考察)

BLUE REFLECTION RAY/澪 第12話『最深』

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はじめに

原作ゲームは未プレイ。

基本情報

  • 監督:吉田りさこ
  • 脚本:和場明子
  • 絵コンテ:吉田徹
  • 演出:田中瑛
  • 総作画監督:宮口久美、中林蘭子、音地正行、村上雄、坂本哲也
  • アニメーション制作:J.C.STAFF

評価

A コンプレックス、ストロング

総評

第12話は、多くの主要人物の信念がぶつかり合うクライマックス回、大乱闘スマッシュブラザーズである。前半の区切りに相応しい盛りだくさんの内容で、今まで積み上げられた物語の集大成と言ってもいい。大部分が戦闘シーンであるが、登場人物の関係性によって展開されるストーリーが根幹にある。対立する双方に明確な課題や目標が与えられ、次回以降の展開にも期待できる。

ストーリー

メインストーリーは、
①仁菜が詩の攻撃から陽桜莉を庇う
②美弦が紫乃を「選」ぶ
である。

サブストーリーは、
(ⅰ)都と有理が話す
である。

メインストーリー①が特に盛りだくさんなので、ここを重点的に見ていこう

分析

第12話は戦闘シーンと都&有理のシーン、エピローグの三つで構成される。

最初の都と有理の会話。都は、(コモンの詳細や赤リフレクターの考察について)なぜ早く教えてくれなかったのかと有理に聞いたが、その瞬間に美弦のフラグメントが奪われたため、答えを濁してしまう形になっている。「現状の我々では……」の後には、「どうすることもできない」のように続くと考えられるが、その原因については未だ分からないのが現状である。

都に対しては、「リフレクターでない人に何が出来るのか」と反語交じりに言うが、それはそれでなぜ有理は陽桜莉たちにも黙っていたのかが気になる。第3話でも、都を救った後のリープレンジ明けに、有理が傍観している様子が描かれている。

もう一つ。前回ラストの美弦の暴走は、フラグメントが抜かれたことを意味していた。コモンの扉は開かないが、それを踏まえた上で紫乃の計画通りである。
[0:20]暴走する美弦

「美弦は大切が多すぎる」と紫乃は説いたが、陽桜莉や百への愛だけでなく、フラグメントを奪うことによる救済の使命も抱えており、妹を捨てるかどうかの葛藤が美弦の中にはある。


さて、美弦のフラグメントが示す像に、主に前の世界での陽桜莉との思い出が具現化し、美弦は放心状態となる。ここからは、仁菜+詩、陽桜莉+瑠夏の問答にシフトする。

そこで今回のメインストーリーの一つである、「仁菜が詩の攻撃から陽桜莉を庇う」に入っていく。このストーリーが仁菜の変化を表しているのは自明である。

青と赤の対立構造の中を移動する仁菜であるが、その流れを具体的に追っていきたい。

まず、美弦の立場としては、コモンの扉を開くことが同時に陽桜莉を救うという目的を果たすことでもあり、それによって自分自身も救われるという。

また、仁菜と陽桜莉の共通の考えとしては、美弦を救いたいということだ。しかし、美弦自身が上のように願っているのであれば、美弦を(直接的に)救う行為の主導権は、当然赤陣営にある。よって、美弦を手助けする立ち位置にいるのが仁菜であり、それを過ちであるとして止める立場にいるのが陽桜莉である。この構図は、本作が幾度となく描いてきたものである。

戦闘の第1フェーズは、美弦に寄り添った議題で始まる。仁菜が陽桜莉を攻撃する際、以下のような主張を口にする。

「これほどまでにお姉さまを追い詰めているのは、平原陽桜莉、お前でしかない」

仁菜は美弦の心を一度覗いており、前の世界での美弦の視点を持ち合わせている。それがこの発言の根拠となっている。

陽桜莉は、美弦が「もう耐えられない」と言っている姿を想像し、攻撃を受けてしまいそうになるが、それを阻止し反撃するのが瑠夏である。その際の瑠夏の発言は以下の通り。
[5:43]陽桜莉を仁菜の攻撃から庇う瑠夏

「お姉さんが苦しいのはそれだけ陽桜莉のことが大切だから」

「お前はお姉さまの何を知っている」と仁菜は瑠夏の攻撃を跳ね返す。

ずっと知らなかった。大切なものを手にする不安や苦しみを。だけど、想いはそれだけじゃない」と瑠夏。

「知らなかった」と過去形なのは、今はそれを知っているということだ。どう知ったのかと言えば、それは陽桜莉の存在によるものである。陽桜莉が美弦(大切なもの)のことで不安や苦しみを抱えてきた様子を瑠夏は傍で見てきた。その陽桜莉を後押しし、寄り添っていくと決意する瑠夏は十分描かれてきている。瑠夏は陽桜莉と同じように、美弦に寄り添うことも可能だと説いているのだ。それは決してフラグメントの管理という手段ではなく、より「正しい」方法に基づいてということである。しかし、詩は

「だから厄介なんです」

と言って反撃する。この場面での詩は、大切なものを手にすることで余計な感情を抱えてしまうので、関係を断ち切るべきだという主張を一貫している。

このように、この第12話に限らず本作の戦闘シーンの多くは、一つ一つの行動に意味を上乗せすることで、ストーリー的にも味わい深いものとなっている。その際の戦闘能力や戦術などはほぼ関与せず、真正面からの対立を単純な力比べなしで演出している。


ここから第2フェーズに移行するが、そこで登場するキーアイテムが、仁菜が紫乃にもらった黒い指輪だ。この指輪を付けると、自分の大切なものに対する想いは無くなる代わりに、戦闘能力が向上し、コモンの扉を開けるのにも一歩近づく。

お姉さまへの想いを忘れるものかと、今まで黒い指輪を付けなかった仁菜。「それがお姉さんを救うこと」という詩の催促と、「お姉さまが求めてくれたあの日の自分に戻るだけだ」という自分への言い聞かせによって、指輪をはめてしまう。
[7:50]仁菜の断末魔に恍惚な詩

指輪をはめた自分を正当化するために、仁菜は再度自分に言い聞かせる。

「いつからか恐れるようになった。初めての居場所、初めて知った想いを失うのは。だが違った。寂しくも悲しくもない。そう、初めから何もなかった。(中略)失うものなど何もない。それが私の強さだ」

戦闘能力が向上した仁菜は陽桜莉をすぐさま追い詰めてしまう。(だが、これによって勝敗をつけるなどということは絶対にしないのがブルリフRの特徴でもある。)この時仁菜は、美弦への想いを忘れかけてきている。

陽桜莉は仁菜に手を差し伸べて、お姉ちゃん(美弦)を想っていることは同じだと言う。ここでは口にしていないが、仁菜の大切な想いを守りたい、誰の想いも奪わせないというのが、青陣営の主張である。

「どんな時も想ってる。お姉ちゃんが大切なの」

「違う。私がお姉さまを……。私は、どうして戦う」と仁菜。「お姉さまを」に続く言葉は、「お姉さんへの想いを断ち切った(指輪をはめた)」だろう。しかし、ここで効いてくるのが、大切な想いを忘れるという指輪の代償である。美弦のためにと思って指輪をはめた仁菜であったが、美弦への想いが消失しかけているために、戦う理由を見失ってしまうというジレンマ。これには詩もあきれ顔である。
[11:43]あきれ顔の詩

陽桜莉と瑠夏は、仁菜の想いを守る(=指輪を破壊する)ことを決める。手法としては仁菜のフラグメントに直接触れることによってだが、当然力づくではない。

ここで語られる仁菜の想い。

「そうだ、お姉さまに出会い、私は本当の自分を知った。分かっている、一度知ってしまえば、もう戻れない。それでも、私は――(ここで仁菜と美弦の音読によるバイロンの詩が挟まれる。)戻りたくない。何も知らなかった私に

「それでも、私は」に続いて、「戻ることを決めた」といった主旨の言葉が続くと想像できるが、仁菜はそれを否定した。そのプロセスを追っていこう。

仁菜は、バイロンの理想を信じる精神に共感し、バイロンの詩を生きる糧としてきた。それを肯定したのが美弦であり、仁菜は美弦に全てを捧げることを決めた。何もない自分から美弦に捧げる自分へと変化し、初めて自分の存在意義を認識した。

「何も知らなかった私」というのは、美弦のいない自分を意味しており、その状態に戻るということは現状の仁菜のアイデンティティが喪失することに他ならない。

それが美弦のためになる行為であっても、それと美弦を忘れるという代償とを天秤にかけ、美弦を想う気持ちを忘れずに美弦のために動くことを仁菜は決断したのだ。

その後、陽桜莉の行為に抵抗することをやめ、指輪は破壊される。そして、詩と陽桜莉が互いの主張をぶつけ合いながら攻防する中、陽桜莉と瑠夏が窮地に陥る。そこで詩の追い打ちから陽桜莉と瑠夏を守ったのが仁菜である。
[15:13]詩の攻撃から二人を守る仁菜

そもそも仁菜が何故美弦の下につこうとしたのか。無論、美弦への信仰はあったのだが、それ以前に、仁菜は自分のような少女を生み出したくないから(フラグメントを奪うことで阻止する)と、自身の信念を以てリフレクターとなっている。

しかし、今回の仁菜は、フラグメントを抜かれるということの危うさをその身をもって体験した。その危機から救ったのが陽桜莉と瑠夏なのである。

また、仁菜が信じるバイロンの詩も、絶望していた仁菜が美弦によって救われたという過去も、「想いを奪わずに希望を見出していく」という陽桜莉サイドの主張を補強するものである。

このように、仁菜が青サイドの主張を支持し、赤サイドを否定するという流れには説得力がある。そのため、仁菜が陽桜莉を庇うというストーリーはかなり構築的で論理的な印象を受ける。

ここで重要なのが、仁菜は単に美弦を信仰しているのではなく、美弦を信仰することで救われた自分を大切にしているということだ。だから、詩に美弦の真意(仁菜を道具としてみていたこと)を明かされても、仁菜は全く動じない。

仁菜「どうでもいい。お姉さまにどう思われようと、私の想いは本物だ」

完全に仁菜を見限った紫乃は、仁菜を攻撃しダウンさせる。

続いて陽桜莉と瑠夏への攻撃。紫乃は、想いを守る存在である陽桜莉と瑠夏がなぜ自分の想いを守らないのか、守る想いの線引きをしているのではないかと言う。対して瑠夏は、勝手に奪うのと守るのは全然違うと答えている。これは、想いの不完全さと、想いを手放すことの危うさを天秤にかけ、どちらをどれだけ重要視するかの意見の相違であり、双方が納得できる解決策は現状無い。紫乃は、

「想いは所詮実体はなく、他人はおろか本人さえも理解できているかどうか分からない。その癖愚かな行動を確実に犯させる。(中略)そんなもの、野放しにすべきではない」

と言っている。これに対して陽桜莉は、

「私には想いがただ恐ろしいとは思えないから。全ての想いを理解することはできないかもしれない。それでも、奪うことはダメ。想いはその人だけのものだから」

と防御する。陽桜莉と瑠夏が友情ビームを放つ際、

「今はまだ、紫乃ちゃんの想いにどうこたえていいか分からない。(中略)紫乃ちゃん、あなたの想いをもっと知りたい」

紫乃に寄り添いたいという姿勢。しかし、紫乃は「想いは間違いを犯す」という主張を曲げない。なぜそのような考えに至ったのか、紫乃の過去にヒントがあるのだろうが、それは視聴者視点でも未だに分からない。

紫乃が陽桜莉のフラグメントを奪おうとした瞬間、阻止したのが美弦である。いつの間にか起きていたらしい。陽桜莉のフラグメントを抜くことを阻止したのは、陽桜莉を大切に思っているからである。紫乃は一瞬驚くが、美弦に

「私は選ぶ。罪を、あなたを。私の全てを捧げる」

と言われ、安心しきった表情。美弦の言う「罪」とは、前の世界での「過ち」によるものであろう。美弦は「正しい世界」を作る道を選んだのだ。完全に紫乃との目的が一致した瞬間である。

まだコモンの扉は開かれないが、陽桜莉たちの完全敗北で戦いは終わる。美弦は、

「きっと想いは、私より私だと、そんな気がしているのに、言葉にするのは難しく、それでも私が私でいられたのは、陽桜莉がいてくれたから。想いを、私を大切にしてくれたから。ねえ、陽桜莉、だから私はね――」

という。「正しい世界を作る」と続くだろうが、そうしたい理由の一つに陽桜莉の存在がある。

急いで駆け付けた都が陽桜莉と瑠夏と百を抱きかかえて、ブルリフ前半部は幕を閉じる。
[23:09]涙を流す陽桜莉、瑠夏、都

補足

1. 斎木有理

先ほども指摘した通り、彼女がどういった目的で動いているのかいまいち掴めない。AASAという組織の配下にあたる彼女は、何かしらの制限を受けているのだろうか。

[4:45]黒い指輪を手にする有理
指輪の元をたどればAASAに行き着くのだろうが、彼女がこの指輪を持っているということは、美弦たちに指輪を渡したのは有理なのかもしれない。

2. ユズとライム

[18:47]友情ビームを手助けするユズとライム
何度か陽桜莉を手助けする謎の存在。おそらくコモン、あるいはそれに準じた場所の住人なのだろうが、その正体は果たして。

コモンの扉が開くと何か不都合なことがあるのかもしれないし、純粋に陽桜莉サイドの肩を持っているのかもしれない。


3. 紫乃

紫乃の過去に一体何があったのか。また、紫乃はそれを「過ち」と言っている。かなり闇が深そうだが……。
[19:23]血のついたナイフを手にする紫乃

そして、美弦はどのようにして紫乃に寄り添ったのか。分からない部分はまだまだ多い。

あと、能力に関して。仁菜が指輪をつけた直後、紫乃の体に変化が。「始まりの力」とも言っている。
[8:21]紫乃の頭から何かが生える描写

美弦を取り込んだ際の何かを植え付ける描写もあり、特殊な能力を持っている。


4. 仁菜の今後

敵に見放された仁菜は自由となるが、今後どのような活躍をするのか。


残された伏線や謎は以下の通り。
①「原種」とは何か?
②「AASA」の正体と目的は?
③第1話で電車の音に搔き消された百のセリフ、何と言っていた?
④フラグメントを抜かれて失った記憶は戻るのか?
⑤仁菜のスーツケースの中身は何?
紫乃の能力は何?
⑦美弦たちとAASAの繋がりはあるのか?
⑧美弦はどうやって前世の記憶を知りえたのか?
⑨指輪の色の意味は?
⑩原種を倒したのは誰?
⑪世界が巻き戻ったタイミングはいつ?
⑫美弦の過ちとは?
⑬何故美弦は陽桜莉に何も言わなかった?
⑭ユズとライムの正体と目的は?
⑮斎木有理の正体と目的は?
紫乃の目的は?
紫乃の「過ち」とは?
⑱美弦はどのようにして紫乃を仲間にした?
⑲山田仁菜のストーリー上の役割はどうなる?


これで、BLUE REFLECTION RAY/澪 第12話『最深』のストーリー分析を終える。

【ストーリー分析】BLUE REFLECTION RAY/澪 第11話『わたしに有罪宣告を』(感想・考察)

BLUE REFLECTION RAY/澪 第11話『わたしに有罪宣告を』

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はじめに

原作ゲームは未プレイ。

基本情報

  • 監督:吉田りさこ
  • 脚本:和場明子
  • 絵コンテ:杉島邦久
  • 演出:石田美由紀
  • 総作画監督:出野喜則、村上雄、坂本哲也
  • アニメーション制作:J.C.STAFF

評価

B スタンダード

総評

第11話は、攫われた瑠夏を起点に登場人物の交錯する思いがぶつかり合う回。中盤にかけてはコモンの定義や美弦サイドの目的などが説明的に明かされる。そこから終盤にかけては著しく盤面が変化するが、その構造自体は追いやすい。ただ、紫乃は美弦が暴走するのを狙っていたようだが、この展開は必然性、論理性ともにやや欠ける。その他数人の思惑も不明瞭という状態であり、モヤモヤが溜まる。

ストーリー

メインストーリーは以下の通り。
①陽桜莉たちが瑠夏を助けに行く
②百のフラグメントが破壊される
③美弦が暴走する

サブストーリーは
(ⅰ)都と斎木有理が出会う
などがある。

都・有理ペアとその他全員という二視点で語られる。メイン、サブ共に新たな情報が明かされ、説明回としても重要な一話である。

分析

瑠夏が攫われた状態からスタート。詩は陽桜莉のフラグメントが目的だと早々に明かしてしまう。それに対して仁菜が怒り、直後の詩の弁明では、「だって、お姉さんだけが苦しむのは不公平だ」と述べている。

仁菜は、美弦と紫乃の計画で利用された結果、心が不安定な状態である。しかし、仁菜以上に深い絶望を知るものが現れ、美弦の計画の対象となる。それが陽桜莉だ。一応、仁菜が犠牲になるのも美弦の計画を遂行するための一つの手段(らしい)のだが、美弦サイドは陽桜莉に狙いを定めている。

要は美弦のために山田が苦しむか陽桜莉が苦しむかの二択である。仁菜がキレたのは、陽桜莉への共感から来るのか、美弦への信仰からくる自己犠牲を望んでいたのか、はたまた他の理由なのか判断できない。そもそも、仁菜は絶望を取り除くことを善とする立場にいるため、陽桜莉のフラグメントを抜くのに躊躇う必要はないという考えも理解できるし、美弦を大切な存在と認識しているという意味で同じ立場にいる陽桜莉を庇っているともとれるが……。
[00:51]詩に怒る仁菜

一方で詩は、美弦が苦しまないように陽桜莉を利用しようとしている。だが、そもそも美弦だけが苦しむ選択肢はないはずなので、上の発言が弁明になっているかは怪しい。

さて、瑠夏は陽桜莉を呼び出すための囮である。陽桜莉と百は美弦たちと接触することになる。陽桜莉は美弦の心の苦しみを直感し、その理由を問う。(視聴者視点では)前の世界の美弦には何かしらの「過ち」があって、それを繰り返さないようにコモンの扉を開かなければならないが、そのためには陽桜莉のフラグメントが必要だという情報が明かされている。その葛藤が美弦の心の苦しみとなっていることは第10話で描かれた通りだ。

その後、苦しみの理由については美弦サイドと瑠夏から陽桜莉に対して説明がなされた。

やや時系列が前後するが、瑠夏が捕まっている状態を解放するために、要望通り陽桜莉は自分の指輪を外して紫乃に渡そうとする。

「あなたに、ずっと大切にしてきた想いがあるでしょ。その想いを指輪は力に変えてくれる。あなたが止めるのよ陽桜莉」
「私はお姉ちゃんが好きなように、瑠夏ちゃんも大好きだから」

当然、瑠夏は反対するが、陽桜莉は瑠夏を助けるために指輪を渡す。

しかし実際は、美弦の要望に従ったわけではなく、リフレクターとなって美弦と真正面から敵対する道を選ぶ。その展開は、これまでの回で積み重ねてきたものを考えれば必然で妥当である。

陽桜莉の力を後押ししたのは、紫乃の発言から察するにコモンの姉妹のユズとライムである。なぜ、ユズとライムは陽桜莉に手を貸したのか、誰の味方なのか、などなど、彼女たちの目的が一切提示されておらず、謎が積もる一方である。

その後、美弦は陽桜莉のフラグメントを抜くことに強い抵抗を覚えるが、紫乃のアシストによって美弦の想いを増幅させ、陽桜莉のフラグメントを抜くように仕向ける。見どころは、陽桜莉と美弦の会話である。

陽桜莉に苦しい想いをさせたくない、陽桜莉のことを分かっていなかったのは私だと自分を責めている美弦。自分の想いでいっぱいでお姉ちゃんの想いに気づかなかったと、こちらも自責の陽桜莉。

美弦は前の世界の「過ち」の回避を行動原理としているのに対し、陽桜莉は前の世界の美弦が具体的に何を失敗したのか知らない。その視点の違いがすれ違いを生んでしまうのだが、それでも頑なに「過ち」の詳細を明かさないのは、それによって陽桜莉をさらに苦しめることになるからだろう。まあ、推測でしかないが。

そのまま、陽桜莉のフラグメントに手を伸ばすが、百が庇う形となる。百のフラグメントは破壊され、再起不能の状態に。一応、フラグメントが破壊される原理については詩が説明している。

前の世界では百を信頼していた美弦は、百のフラグメントを破壊してしまったことにより深く傷ついてしまう。

そして、三日後のタイムリミットの鐘が鳴る。紫乃は、美弦の心の苦しみに付け込んで、美弦を暴走させる。その意図は不明だ。紫乃の本当の目的は、仁菜を利用することでも陽桜莉を利用することでもなく、美弦を暴走させることだったのだろうか。

美弦の心の苦しみに付け込むためには、百のフラグメントが破壊されることで美弦に精神的ダメージを負わせることが必要だったのだろうか。しかし、百が陽桜莉を庇うといった展開を狙うのは流石に無理がある。偶然美弦が苦しんだところを狙ったとするのが、まあ妥当なのかもしれない。

百が大切に思っている存在かつ陽桜莉を庇うことの出来る存在として、百が選ばれているのだろうが、恣意的に作られた展開という印象も受ける。

補足

1. 斎木有理
AASAの関係者らしい。コモンに関係するあれこれを都に説明する。目的や人物の相関は不明。


2. コモン

集合的無意識により形成された世界。本来、人間感情を具現化した結晶はコモンにのみ存在する。しかし、原種との戦いで時空が歪んだ現在、世界の理は変化している。その歪みは急速な広がりを見せている。それを加速させている原因は、奪われた少女の結晶の力を使うことで時空の歪みを意図的に引き起こす存在にあるという。


3. 美弦たちの目的とその影響

陽桜莉を苦しめたくないというのはあくまで美弦の個人的な欲求であり、赤リフレクターの大義名分というものは別に存在する。

それは、コモンの扉を開き、少女たちの無意識の世界を管理することによって、少女たちの苦しみの根源を取り除くことである。愚かな人間がいる限り、少女たちの苦しみの連鎖は解かれない。フラグメントを戻すという行為は、一時的な効果しかない。だから、理不尽に苦しむ少女を二度と誕生させないためには、力を持つ自分たちがコモンを管理するしかない。そういった信念のもとで動いている。

赤リフレクターの中心的存在である美弦は、過去に何度も苦しむ少女を見てきた。そして、その誰もを救えなかったという。

斎木有理は、コモンが管理されるということは、想いの尊厳が失われている状態でもあるという。


残された伏線や謎は以下の通り。
謎に関しては、少し抜粋する。
①「原種」とは何か?
②「AASA」の正体と目的は?
③第1話で電車の音に搔き消された百のセリフ、何と言っていた?
④フラグメントを抜かれて失った記憶は戻るのか?
⑤仁菜のスーツケースの中身は何?
紫乃の能力は何?
⑦美弦たちとAASAの繋がりはあるのか?
⑧美弦はどうやって前世の記憶を知りえたのか?
⑨指輪の色の意味は?
⑩原種を倒したのは誰?
⑪世界が巻き戻ったタイミングはいつ?
⑫美弦の過ちとは?
⑬何故美弦は陽桜莉に何も言わなかった?
⑭ユズとライムの正体と目的は?
⑮斎木有理の正体と目的は?
紫乃の目的は?


これで、BLUE REFLECTION RAY/澪 第11話『わたしに有罪宣告を』のストーリー分析を終える。

【ストーリー分析】白い砂のアクアトープ 第2話『濡れるのも仕事のうち』(感想・考察)

白い砂のアクアトープ 第2話『濡れるのも仕事のうち』

←前回 次回→

はじめに

頑張って追いつきます。

基本情報

評価

A スタンダード

総評

第2話は、第1話に引き続き風花視点が中心となる。ポイントは、夢を追いかけるくるると想いを支える風花という構図だ。前回のファンタジー路線とは打って変わって、現実を硬く描いていく。「風花ががまがま水族館で働く理由を見つける」エピソードとして、ストーリーが丁寧に作られており、好感が持てる。

ストーリー

今回のメインストーリーは以下の通り。
①風花が住み込みでくくると働くことになる
②風花がペンギンの餌やりで失敗し、くくるに叱られる
③風花が夏凛(観光協会の公務員)からくくるの話を聞く
④風花とくくるが話す

サブストーリーは、
(ⅰ)くくるが夏休みの目標を立てる
(ⅱ)風花とくくるが営業の男を追い払う

ファンタジックな前回とは一変、仕事のシビアさなどの現実の重さを強調しつつ、二人の間合いの変化を描く第2話である。

分析

まず、第2話のストーリーの大枠を作るのは、風花の水族館での仕事である。当然、背後には心理的なストーリーが展開されており、仕事のいきさつが風化の決意に繋がっていく。

その決意とは「夢を追いかけるくくるを応援すること」だ。そこに至るための要素(風花の過去、風花の失敗など)が、テーマを補強する形になっており、ストーリーの強度は高い。

冒頭、風花が水族館のスタッフとして働きたいとくくるに懇願する。そもそも、なぜ水族館で働きたいと思ったのか。

前回の内容に戻るが、くくるが「人手不足」を口にした後、風花が「ここにおいてください」と言っている。確かに、困っている他者の助けになりたいというのは自然な心理であるし、風花は夢を失いさまよっていたところに新たに目的を見出したため、前回の展開に無理はない。しかし、それが「がまがま水族館での仕事」でなければならない理由は描かれていないのが現状である。その理由を見つけるのが第2話のメインストーリーである。

具体的に風花の過去を追っていこう。風花がセンターと決まった際、とある理由から後輩がセンターをやりたいと言い出し、風花がチャンスを譲った。しかし、それによってマネージャーやスタッフにはやる気がないと判断され、徐々に出番を失ってしまった。高校卒業の時期も相まって、アイドル活動を辞めるに至ったのだ。

風花のアイドル絡みの過去についてこれ以上掘り下げる必要もないだろうから、風花の過去に関する情報は出尽くしたといっても良いだろう。

さて、現在。流れに流されて行き着いた住み込み先で、「どこでも良かった」と風花が思っていることをくくるに指摘される。
[6:40]浮かない様子のくくる

風花の初仕事はペンギンの餌やりである。くくるに指示されて行った餌やりショーは、完全に失敗に終わる。
[10:18]子供たちに笑われる風花
[11:15]手に絆創膏が三つ

この時風花が、水族館員としてだけでなく、餌やりショーを演じる役者としても失敗しているというのは、一つポイントだろう。アイドル活動の過去に、しかと向き合えていない風花の一面が如実に表れている描写である。

水族館に「真心を込める」とのくくる。風花とは対照的にくくるの仕事想いな点が随所に表れている。風花はくくるの傍で、その熱心な姿を間近で見ることになる。
[7:59]風花のマニキュアを注意するくくる
[10:25]風花を叱るくくる
[12:00]看板を立てるくくると風花

そこで挿入されるストーリーが風花と夏凛(観光協会の公務員)の会話である。夏凛は、設備の老朽化が主要因となって水族館が今月末に閉館になること、くくるは水族館を続けることを諦めていないこと、くくるは切羽詰まっているということなど、状況を話した。風花は、夢を守るために真剣なくくると自分の姿を照合し、辛い思いはしてほしくない、力になりたいと言う。
[14:07]胸に手を当てる風花

くくるにとってがまがま水族館は大切な場所であり、それを守ることが夢である。風花はアイドルの夢をあきらめたことをくくるに打ち明ける。夢を追いかける少女とその夢を応援する少女。風花の過去のエピソードでは、他人を必要以上に気にかけてしまう性格が結果的に彼女の失敗に繋がったが、そんな風花の立場が明瞭になったのが今回のラストシーンである。

夢に対するくくるの真摯さを間近で眺めていた風花がその助けになるというストーリーには、十分な強度がある。

補足

1. 8月31日

8月31日は閉館のタイムリミットであった。主な要因は、施設の老朽化とその維持費不足。それを回避すべく、くくると風花は奮闘する。


2. 高校生

風花は高校生であることが明かされた。高校を辞めないとして、常識的に考えれば、9月には学校が始まるだろうから沖縄を離れないといけない。ストーリー的に考えれば、8月31日の閉館フラグを折ることが一つの目的地であるから、風花の問題はストーリーに直接関わってくることがあるかもしれないし無いかもしれない。


3. 風花の母

風花が母と電話をするシーンがあったが、沖縄に行っていることすらも伝えていない。水族館に関してだけでなく、家族絡みのストーリーにも注目したい。


4. 紅芋の変色

[3:48]サーターアンダギーが緑色に
中の紅芋が緑色に。なぜか。紫芋や紅芋に含まれるアントシアニンという酸性の物質が、生地のベーキングパウダーの塩基(アルカリ)性と反応するためである。

アントシアニンは青紫色の天然色素であり、塩基性に傾くと青紫→緑に、酸性に傾くと青紫→ピンクになるという特徴がある。つまり、紅芋にレモン汁を垂らすとピンクになる。


残された伏線や謎は以下の通り
母子手帳の意味は?
②ファンタジー現象の謎

これで、白い砂のアクアトープ 第2話『濡れるのも仕事のうち』のストーリー分析を終える。

【ストーリー分析】Sonny Boy 第1話『夏の果ての島』(感想・考察)

Sonny Boy 第1話『夏の果ての島』

次回→

基本情報

評価

B エキセントリック

総評

第1話は、漂流された学校の世界で過ごす中学生たちの群像劇である。冒頭から既に漂流後の生活が始まっており、謎を多く残したまま物語が進行していく。また、視点は一様に定まらず、ストーリーラインは点々としており、ストーリーの強度はそれほど高くない。群像劇と言えば聞こえはいいが、登場人物の誰とも視点を共有できないのが現状である。これら諸々の性質は意図されたものであろうが、それが吉と出るか凶と出るか。

ストーリー

メインストーリーは以下の通り。
①キャップがリーダーとなる
②希がグループの参加を拒否する
③朝風たちがキャップに反抗する
④希が長良と落下し、世界が晴れる

①から④は、おおよそ時系列順になっている。

これらをメインストーリーと断定するには根拠が薄く、起承転結の構成とするにもかなり無理がある。ただ、ストーリーを突き動かしているのは、生徒会側のキャップと、それに反抗する朝風、そして景色を変えることに成功した希なので、この3人(グループ)を中心に据えて物語を見ていけば良いだろう。

サブストーリーは、
(ⅰ)ラジダニが世界の真実を探求しようとする
(ⅱ)長良と希の過去
などがある。

漂流が起こったきっかけは、サブストーリー(ⅱ)に大きなヒントがある。定石に従うならば、(ⅱ)を展開した後に漂流生活を描き、視聴者と視点を共有する主人公となりうる存在(長良)を軸に、ストーリーを組み立てていくだろう。だが実際は、①→②→(ⅰ)→(ⅱ)とストーリーが展開されている。それも、冒頭の①の時間軸は漂流直後というわけではなく、この時点で既に漂流から時間が経過している。そのため、日常→非日常に移行した際に普通描かれるべき、登場人物の反応(驚き、恐怖など)とその後の行動といった描写は必然的にすっ飛ばされている。(そもそも、日常→非日常のストーリーが存在していないこと自体が特殊である)

とりあえず、主要となる登場人物の名前、劇中の呼称、顔は一致させておきたい。

分析

上で述べた通り、冒頭のシーンは漂流からしばらく時間が経過した後である。視聴者はやむなく作品世界に叩きこまれ、どこに力点を置いて見ていけば良いのか判断しにくい。

それにしても、登場人物が多すぎる。1クールアニメの尺的都合上、キャラクターをどんなに上手く描き分けることが出来ても、主要人物は10人程度が限界だろう。中途半端に36人に個性をつけ、無駄に描き分けることによって、記号的な人格を持つキャラクターのオンパレードにならないことを祈る。

一応、第1話の段階では、長良と希、明星(ほし)とキャップとポニー(本名は椎葉まち?)、朝風の三つの勢力というシンプルな構図が終盤まで形成されているため、キャラクターの描き分けについてはけじめがついている印象。ストーリー自体も追いやすい。

ひとまず、明星の計画からストーリーが始まるので順を追って見ていく。その計画というのは、「新しいルールを作る」ということだ。生徒会長のポニーとキャップと共に、「漂流教室」というグループを作り、秩序を与える。リーダーがキャップに決まったのち、この世界のルールを定めていく。

グループに興味持たない長良とスマホを持っていない希は、グループから離れている状態だ。
[7:27]この世界のルールを二人に説明するはやと

朝風は、キャップがリーダーとなって仕切っている状態に嫌悪感を抱いていた。一旦は能力で反抗しようとするも、ルールに反したとして罰を受けてしまう。この時点では、キャップは自身の力で朝風を止めたと思い込んでいる。

次の場面、スマホを渡されてグループに誘われた希は、スマホを壊すことで意向を示す。ルールに反したとして、朝風と同じように罰を受ける。

さて、時が経って、朝風が再びクーデターを試みようと、新たに二人を連れてくる。電気をビリビリしてそうな女の子が上海、もう一人の長身の男の名前は不明(声もない)。
[17:36]上海と長身の男

おそらく学校の備品や構造物自体を動かしているのは、長身の男の能力によるものと考えられる。このとき、朝風は何のルール違反も起こしていない。そのため、上海と長身の男には罰が下り、朝風には罰が与えられない。
[18:54]動揺するキャップ

その後、キャップがバットで朝風を殴る。これはルール違反に相当し、明星の指示でキャップは罰を受ける。
[20:16]明星が罰を下す場面

「ルール」に関して、明星たちが決めたものがそのまま世界のルールになっているのか、はたまた世界のルールを最初から知っている明星が、自分たちが定めたルールという方便で黒板にそれを書いたのか、不明である。後々、補足の項で見ていく。

結果的には、キャップの独裁は終わっているため、表面的にはクーデターは成功したとみなせる。だが、世界の謎について、明らかに明星だけが多くを知っているような匂わせ方をしている。以後、彼が36人のリーダー的存在となっていくだろう。

その後、希が大ジャンプして落下することによって、世界が晴れる。このストーリーは、キャップと朝風のいざこざとは何の関係性もなく、独立したものとなっている。

長良と希に関して、全体を通してみたときに、どこか冷めた態度をとっている長良、周りに流されずに自分の意思を持ち続ける強かな希、というキャラクター像は表現されている。

補足

1. 能力

漂流した世界では、全員が何か特殊能力を持っている(はず)という設定。

長良
不明。


[4:19][12:05][21:30]希にだけはっきりと見えている「何か」
その「何か」は白羽なのか鳥なのかはたまた別のものなのかは分からない。だが、「ひまわり派、たんぽぽ派」のくだりから、何か眩しいものであることは間違いない。一応「長良にだけ見えていない」という解釈も考えられるが、周りの反応を見るに希にだけ見えているとするのが妥当だろう。能力に関係していると考えるのが自然か。

「ねえ、君はひまわり派? それともたんぽぽ派? 今いる場所より眩しく見える場所があったら、行って見たくなるか、置かれた場所で眺め続けるか」
「たんぽぽ派……かな」

キャップ
不明。

ポニー
[17:58]ポニーが能力を使って明星を逃がしたような描写
空き缶と明星の位置関係が入れ替わっている。能力は、物と物の位置を入れ替えるようなものだろう。おそらく、自分の体もそれによって動かしている。

明星
[20:56]朝風に見せた幻覚(?)
他人の脳内に直接語りかけるタイプの能力だろう。

朝風
空間を歪めてガラスを割っているような描写。

瑞穂
[4:51]「よーしよーし偉いねー」と猫と戯れる瑞穂
周りには大量の段ボール。能力は何か欲しいものを手に入れるとか? 「偉いねー」と言っているあたり、猫に指示しているのだろうか。

その他、気になる人物はいるが保留。


2. 漂流中の人間

[5:11]「2中3年2組、生徒会の谷川です」
計36人。全員クラスメイトである。その割には、人間関係がかなり殺伐としている印象。希は帰国子女という設定があり、キャップはそれを認知している。

身体的特徴としては、お腹は空くし、眠くもなる。おそらくケガも治る。普通の人間と何ら変わりはないようだ。


3. 漂流中の生活

スマホやアプリが使えるという時点で、電波は通っている。電気も水道も使えるしトイレも流れる。大量の段ボールもあり、食事も支給されている。スマホの電池もあれば新しいスマホもある。

これ、瑞穂の能力で食事やその他諸々賄っているとしたら、生活を営むうえで瑞穂の能力にウェイトが偏りすぎている気もする。あまりにも都合の良い能力なので、漂流する人間が生きられるよう、恣意的に与えられたものなのだろうか。


4. 過去

長良の二者面談と長良と希の会話のシーン。外はセミがうるさい。夏休み、もっと言えば8月16日の出来事なのだろう。

まず、長良と先生の二者面談……なのだが、グラスが三つ置いてあるあたり、本来は三者面談の予定だったのだろう。長良は進路を決めていないし、相談相手は先生しかいないようだし、長良の家庭の事情が気になるところだ。

次に、長良と希の会話とも呼べない会話を見ていきたい。まず、希は一方的に長良の名前や学年を知っている。帰国子女の転校生、おおかた、クラスの名簿をチェックしたのだろうと想像できる。そして、その後の会話。
「君、本当はどこかに行きたいと思ってる?」
この問いに対して、長良は無言を貫いており、彼の行動からしてもその答えは読み取れない。一応、「ひまわり派、たんぽぽ派」の問いではたんぽぽ派と答えている。だが、これでは上記の問いの答えになっていない。

[16:36]校舎に落ちる雷
これがきっかけとなって、漂流生活が始まったと考えられる。このとき、長良と希は屋上に、ラジダニは図書室にいた。クラスメイト全員は学校にいたのだろうか。他の学年クラスの生徒や、先生に影響はあったのだろうか。

あと、学校で変な事件が夏休み前に起こっていたらしい。具体的には、
①1学期に校庭でオーロラやスカイフィッシュが観測された
②ロッカーから三億円が見つかった
の二つ。(不可解な事件がこれだけかは分からない)


5. 時間

ラジダニの考察によれば、「僕らだけが取り残されて静止している」とのことだ。そのため、漂流中どれだけ時間が進もうと、現実世界では時間が進んでいないと考えている。

[0:09][0:44]秒針が動き時計が正午を指す
わざわざこのシーンを二回描いているということは、ループないし時間軸の孤立を示唆しているのだろう。日付は黒板の文字から8月16日。季節も天気も変わらないまま、この日を繰り返しているということだろうか。

ちなみに、『涼宮ハルヒの憂鬱 エンドレスエイト』のループ期間は8月17日からである。エンドレスエイトを意識しているようにも思える。


6. 明星

謎が多い男。世界が強制力を持つことを最初から知っていたこと、キャップをリーダーに仕向けたこと、自分たちを「犠牲者」と見なしていること、世界が晴れても表情が変わらなかったこと、などなど、どこか裏のある人間だ。それこそ、漂流した世界を一度経験している人間と言われても、何の違和感もない。

黒板に書いたルールが世界のルールと同一のものだとすれば、なぜそのルールを知っていたのか。(例えば、学校の備品を壊すことがルールに反する行為であることは、希の一件から証明されているが、なぜそれがルール違反になることを知っているのか)

そもそも、ルールは既に決められているものなのか新しく塗り替わるものなのか、それ自体が不明でもある。


7. ラスト

なぜ世界は晴れたのか、そのメカニズムを追及するのも野暮な気がするので放置。晴れたことによって得た情報は色々ある。学校が水に沈んでいること、目の前に大きな山があること、晴れても罰の効力は持続していること(キャップ)、などなど。

罰が続いているということは漂流中であるということ、このまま8月16日を延々と過ごすことになるだろう。昼と夜を行き来していたら8月16日の24時間をループしていると考えてみたり……。


残された伏線や謎は多すぎるため、抜粋する。
①長良の能力は?
②希の能力は?
③瑞穂の能力は?
④漂流世界と現実世界の時間の関係は?
⑤世界のルールについて
⑥学校の他の人間はどうなった?
⑦夏休み前の不可解な事件のストーリー上の役割は?
⑧希の問いに対する長良の答えは?
⑨長良の家庭の事情は?
⑩明星の「犠牲者」の意味は?
⑪明星の正体は?
⑫希の正体は?
⑬漂流から解放される条件

他にも、気になる部分は多々ある。


以上より、Sonny Boy 第1話『夏の果ての島』のストーリー分析を終える。

日記 7/20

お知らせ

テストあるので今月中は記事書かない。

劇場版アニメ

2021年放映の劇場版アニメ、上から見た順

スタァライトが一番面白かったなあ。円盤買う予定。

あと閃光のハサウェイとか見に行きたいけど8月中もやってくれるだろうか。

【ストーリー分析】白い砂のアクアトープ 第1話『熱帯魚、逃げた』(感想・考察)

白い砂のアクアトープ 第1話『熱帯魚、逃げた』

次回→

基本情報

評価

A テクニカル

総評

第1話は、くくると風花の出会いの回。見どころは、風花の心理と世界観の描写である。風花の繊細な心理描写を交えつつ、今後の伏線になりそうな不穏な要素が多々挿入されており、巧妙な構成といえるだろう。

ストーリー

今回のメインストーリーは以下の通り。
①風花がアイドル事務所を辞め、沖縄に行く
②風花が水族館でくくると出会う

サブストーリーは、
(ⅰ)くくるの学校生活
などがある。

ノローグを用いて内面描写が描かれたのは風花のみである。くくるは、(ⅰ)で母子手帳の回想があったのだが、それについては後々見ていくことにしよう。

分析

第1話の狙いは、視聴者を作品世界に没入させることにある。背景や小道具の作画や劇伴が世界観にマッチしているのはさることながら、登場人物の扱いにも一工夫置かれている。具体的には、風花とくくるの視点をスイッチさせつつも、あくまで視聴者の分身(作品世界へと誘導する役割である主人公)を風花一人に定めることで、作品への没入感を高めている。また、行き当たりばったりな風花を描くことによって、風花の悩み、過去のしがらみ等がストーリー進行に極力影響を与えないような構成になっている。言い換えれば、風花が新たに見た世界が、ストーリーを突き動かしているといったところか。

さて、沖縄に飛んできた風花であるが、まずは回想から。ここで、風花がアイドル事務所を辞めたことが明らかになる。その決定的な要因は判断がつかないが、担当者は「やる気がなかった。チャンスを人に譲るなんて甘い」と述べる一方で、後輩からは「先輩のチャンスを奪った私のせい」と風花に謝罪をしている。

風花自身は、「辞めるのは私が決めたこと」と言っており、この時点では、特に未練や後悔といったマイナスの心情は読み取れない。後輩を応援している気持ちも嘘ではない。

ところが、再び回想が挿入される中盤、風花の目は涙を浮かべている。
[17:41]「頑張ったのに」と涙する風花

具体的に回想のシーンを追って見ていこう。風花は努力の末、新曲のセンターに選ばれた。しかし、後輩が担当者に迫る場面とそれを陰で聞いている風花の描写ののち、センターはその後輩に代わる。風花はサブポジションに落ち着くどころか、(おそらく自分の意思で)新曲から完全に降りている。

謎が残る。まず、その担当者は「チャンスを人に譲った」と述べている。この「チャンス」は、後輩の発言から、新曲のセンターを担うことと同義であると見てよいだろう。担当者の「センターを譲る」とは、最終決定権がまるで風花にあったかのような物言いだが、「頑張ったのに」と涙するほど熱を注いでいた風花が、果たしてそのような決断をするだろうか。まあ、深く考えるものでもないかもしれない。

一旦、サブタイトルの『熱帯魚、逃げた』に注目したい。イシガキカエルウオに「同じだね、私と」と語りかけたことから、熱帯魚=風花だ。「逃げた」のストーリー上の意味として候補は二つ。実家に帰ることから逃げたのか、アイドル活動から逃げたのか。これに関しては、その後の展開を見る限り後者の解釈が適切だ。
[16:15]「同じだね、私と」と熱帯魚に語りかける風花

熱帯魚と風花の共通要素は「こんな隅っこに隠れてたら、みんなに気づいてもらえない」点と、「頑張り屋さんな」点だ。風花が頑張り屋さんだったのはアイドル活動をしているとき。隅っこに隠れているという部分をアイドル活動に当てはめるのならば、最大限に見積もっても脇役に落ち着いていた風花、といったところか。(一応、握手会にファンと握手する描写はあった)

どういった経緯で「逃げた」のか、詳細は不明だが、アイドル活動を辞めることが自分の意思でない限り、「逃げた」という表現はまず出てこないだろう。その後、怒涛の水流から逃げる風花という、ファンタジー色を全面に押し出した場面が挿入される。これにて、直後の風花とくくるの出会いに続く。

このように、第1話の時点では、風花のアイドル絡みのストーリーラインを強固に保つためのピースが不足している。所詮、匂わせの段階に過ぎないので、多くを語ることもないだろう。

とまあ、長々と過去を掘り下げていたが、今回は、風花がくくると出会う回だ。そこに至る変化を象徴的に表しているのが、海の生物である。具体的にはイシガキカエルウオとケープペンギンだ。
[23:21]ペンギンに重ね合わせるようにくくるに向かって走る風花

過去の風花はイシガキカエルウオと重なっている。そこから「逃げた」ことにより、夢や憧れを失った「何もない女の子」となる。行き当たりばったりな様子の風花を淡々と描くことによって、風花の虚無がより強調される形となっている。最後の場面、風花はくくるに「働かせてください」とお願いする。第1話において初めて、風花が積極的に自己主張をする場面だ。

まさにケープペンギンが、最後の場面の風花を象徴しており、「内に閉じこもる熱帯魚」から、何もない存在へ、そして「自由に泳ぎ回るペンギン」という変化が読み取れる。具体的なペンギンの生態は語られていないが、何もないからこそ自由な風花、そして解放感を演出するには適役だ。

一方のくくるに関しても少し語っておきたい。とその前に、シーンの切り替わりの指の演出がよかったので注目。
[10:36]スマホを操作する風花の青のマニキュア
[10:38]バイクのスイッチを入れるくくるの無垢な指

明るく朗らか、海の生物ガチ勢、仕事熱心なくくる。そんな彼女が顔を曇らせた場面、回想が入る。
[12:09]二つの母子手帳

交付日は、両方が平成14年10月8日で同じ。片方の母子手帳には、くくるの氏名と生年月日が記されており、もう片方は何も書いていない。くくるは双子で生まれてくる予定だったのだろうか。

そして、くくるは高校生になった現在でも、それを思い出しては、浮かない表情をしている。くくるの誕生の真実は、今後のストーリーのキーとなっていくだろう。

補足

1. 生年月日

[6:53]風花の生年月日:2003年5月17日
[12:09]くくるの生年月日: 2003年7月7日(平成15年7月7日)
[15:51]7月19日までチェックされているカレンダー

街中やアイドル事務所に貼ってあるポスターから、現在は2021年。カレンダーの情報から7月20日あたり。東京や沖縄の高校なら、夏休みに入っていてもおかしくない。ちなみに、2021年7月のカレンダーと曜日が一致している。

風花とくくるは同い年だ。年齢は18歳。留年していなければ高校3年生のはず。数学の授業の内容が数Ⅱなのが若干気になるが、特に突っかかることでもないだろう。

風花に関しては、これから水族館で働こうとしている部分から、高校に通っていないとするのが妥当だろうか。


2. ファンタジー

[1:23][12:31]お供え物を口にするキジムナー
[8:21]前を歩くキジムナーに全く視線を向けない風花

くくるが言っていた「キジムナー」は、この派手な格好をしたやつを指す。人間離れしたキジムナーの行為と、キジムナーがまるで存在していないかのような描写。

[9:10]朝起きたら帽子が消えていた風花と、取り囲むように配置された骨のようなもの
[17:57]風花の幻覚(?)

とりあえず現時点では、「分からないことはキジムナーの仕業」で片付けてしまって良いのではないか。


3. がまがま水族館

[15:51]カレンダーの8月31日に赤い〇
この日、何が起こるのか、何かのタイムリミットなのか、未だ不明。

作品のあらすじには、がまがま水族館は閉館の危機とあるが、第1話を見る限りそれほど小さな水族館にも見えないし、それなりに来場者もいるので、現状の問題は人材不足くらいのようにも見えるが……。


残された伏線や謎は以下の通り。
①風花の過去に何があった?
母子手帳の意味は?
③8月31日に何が起こる?
④ファンタジー現象の謎

その他の主要人物がストーリー上どんな役割を持っているのか。この先の展開が楽しみだ。

これで、白い砂のアクアトープ 第1話『熱帯魚、逃げた』のストーリー分析を終える。

日記 7/6

最近、文学小説を買いました。上から先に買った順。

ちなみに積んでます。『ナナ』を70ページ読んだくらいです。上二つなんて4月くらいに買ったのに。

俺は全然本を読まない人間です。小学校の頃に、読んだ小説を記録して月一で提出するイベントあった人いると思うんですけど、毎年誰かが表彰されるじゃないですか。そんな毎日のように本読んでる生徒が前の席にいて、記録用紙を提出する際、必然的にその人に自分の記録が晒されるわけです。小学生の頃の自分はそれを申し訳なく思っていたのですが、結局本を読むことはほとんどありませんでした。

そのまま読書に特に興味を持つことなくアニメオタクになった現在、一に美しい日本語に触れて語彙力を鍛えるため、二に教養をつけるため、文学に手を出しました。そんで何買うかなんですけど、これはアニメが関わったり関わっていなかったりします。

『世界の終り』はアニメ史に残る名作『灰羽連盟』のもとになっていると言われている作品であり、『獣の奏者』も名作アニメ『獣の奏者エリン』の原作です。『一九八四年』はアニメ関係なく友達に勧められて、『華氏451度』はその隣に置いてあって帯に『100分de名著』と書いてあったからです。母がよく見てた番組でした。残り二つの謎のフランス文学ですが、当然アニメとは直接的なつながりはないです。間接的なつながりすらありません。ですが、アニメオタクであるがゆえ、深夜アニメを批評する人間であるがゆえに買った作品です。この理由当てたらエスパー人間。

以上、近況報告でした。